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HF帯RFIDとは?その特徴をわかりやすく解説!

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HF帯RFIDとは?その特徴をわかりやすく解説!
HF帯は「High Frequency(短波帯)」の略で、13.56MHzの周波数を利用します。HF帯は通信距離が短く、安定した通信性能と高いセキュリティ性を持つことから、さまざまな分野で利用されています。本コラムでは、HF帯RFIDの特徴や動作原理についてわかりやすく解説します。

HF帯RFIDとは?

HF帯RFIDは、13.56MHzの周波数帯を使用する近距離無線通信技術です。この技術は電磁誘導方式を採用しており、UHF帯の電波方式に比べて水分や金属の影響を受けにくいという特長があります。そのため、通信距離は5~70cm程度と短いものの、安定した通信性能が求められる場面で広く活用されています。通信距離が短いながらも高速なデータ転送が可能で、セキュリティや個別認証が重要な用途に適しています。身近な例として、交通系ICカード、住民基本台帳カードなどの個人認証、医療の検体管理や手術用具管理が挙げられます。これらは日常生活や産業分野でその利便性を発揮しています。さらに、スマートフォンに搭載されるNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)もHF帯の一種です。NFCはキャッシュレス決済やデータ共有など、現代のデジタルライフを支える重要な技術として広く利用されています。


1.HF
帯RFIDの特徴


通信距離

通信距離は5~70cm程度と短めで、1対1でものを認証する用途に適していることから、不要なタグまで読み取るリスクが低い。

金属や液体環境への耐性
HF帯は電磁誘導方式を使用するため、水分や金属の影響を比較的受けにくい。

高いデータセキュリティ
HF帯RFIDは、ISO/IEC 14443やFeliCaなどの標準化されたプロトコルを採用し、高度な暗号化技術を活用することで、データへの不正アクセスを防止可能。

2.HFRFIDの動作原理

電磁誘導方式
HF帯RFIDは、リーダライタとRFタグの間で電磁誘導を利用し、エネルギー供給とデータ通信を行います。
アンテナを形成している導線に電流が流れると、下図のように、導線を中心とした同心円状に磁界が発生します。この磁界をRFタグのアンテナが受け、RFタグへ電流が流れます。(電磁誘導の原理)
これにより、RFタグ上のICチップが起電し、アンテナとRFタグ間で交信が可能となります。

詳しく知りたい方は こちら >> 技術コラム【HF帯RFID】交信原理とRFタグの向きによる特性変化



データ送信

RFタグは、リーダライタから送信された信号を受信し、タグ内のデータを変調してリーダライタに返送します。この変調には、振幅偏移変調(ASK)や位相偏移変調(PSK)などが使用されます。

データ受信
リーダライタはRFタグから返送された信号を復調し、データを読み取ります。



3.HFRFIDの国際標準規格

HFRFIDは用途ごとに複数の国際標準規格が定められています。

 規格 特徴 読取距離 通信速度 主な用途
ISO/IEC14443(Type-A)  世界で最も普及している近接型ICカード 10cm以下 100~数百kbps 会員カード、ポイントカードなど
ISO/IEC14443(Type-B) セキュリティ性能が高く、公式文書や金融関連の用途で主に使用される 10cm以下 100~数百kbps マイナンバーカード、IC免許証、ICパスポートなど。
ISO/IEC15693  通信距離が比較的長く、複数タグの同時読み取りが可能なため人の管理以外にも物の管理にも用いられる 最大70cm 1~26kbps程度 物流、在庫管理、医療機器管理
ISO/IEC18092(NFC)  既存の非接触ICカード技術(Type-A、Type-B、Type-F)との互換性を維持し、広範な用途に対応  10cm以下  100~数百kbps 近距離無線通信規格で、スマートフォンなどに搭載。


4.HF帯RFID
の技術的なポイント

1.リーダライタの送信出力と交信距離の関係
リーダライタの送信出力が大きいほど、交信距離は長くなる傾向にあります。ただし、送信出力が倍になっても交信距離が倍になるわけではありません。

より詳しく知りたい方はこちら >> 技術コラム【HF帯RFID】リーダライタの送信出力と交信距離の関係

2.アンテナサイズと交信距離の関係
一般的に、アンテナサイズが大きくなるほど、交信距離は長くなる傾向にあります。これはアンテナループの開口面積が大きくなるほどアンテナゲインが大きくなるためです。ただし、電波法の制限があり、アンテナサイズを無限に大きくすることはできません。

より詳しく知りたい方はこちら >> 技術コラム【HF帯RFID】アンテナサイズと交信距離の関係

3.RFタグサイズと交信距離の関係
一般的に、RFタグのサイズが大きくなるほど、交信距離は長くなる傾向にあります。これはRFタグのアンテナを貫通する磁束が、面積が大きいほど増えるためです。ただし、共振周波数やQ値の影響により小さいRFタグのほうが交信距離が長くなる場合もあります。


4.設置環境による影響
RFIDにおいて、設置環境は通信性能に大きな影響を与える要因となります。例えば、複数のアンテナを近接して設置すると、電磁誘導や相互干渉が発生し、RFタグのデータ読み取りや通信性能が低下することがあります。このような問題は、アンテナ間の距離を広げることで軽減できます。また、金属がアンテナに近接すると、通信距離やエリアが縮小する場合があります。この影響を防ぐためには、金属との距離を確保したり、フェライトシートを使用したりする対策が有効です。これらの課題を解決するためには、設置環境を十分に考慮し、適切な対策を講じることが重要です。RFIDの性能を最大限に引き出すためには、周辺環境の影響を理解し、それに応じた設計や調整を行う必要があります。

 【あわせて読んでおきたいコラム一覧】

 ➀技術コラム【HF帯RFID】金属近接の影響とは?メカニズムとその対策

 ➁技術コラム【HF帯RFID】アンテナの相互干渉とは?

 ➂技術コラム【HF帯RFID】アンテナの誘導とは?

5.HFRFIDの活用例

製造業
作業指示書にRFタグを取り付けて、アンテナにかざすことで、作業の開始・終了時間を記録し、進捗状況をリアルタイムで把握できます。RFID導入により手書き日報の手間を削減し、進捗管理の精度を向上させることが可能です。

医療
薬剤にRFタグを取り付けることで、調剤から患者への投薬までの流れを記録し、薬剤管理の精度を向上させます。これにより、薬剤の使用履歴や有効期限の管理が簡便化され、投薬ミスのリスクを低減できます。

図書館

図書にRFタグを取り付けることで、複数冊の図書の貸出・返却処理が一括で可能です。これにより、従来のバーコード方式に比べて作業時間が短縮され、利用者の利便性が向上します。また、図書館の出入口に設置されたRFIDゲートシステムは、貸出処理がされていない図書が通過すると警告を発する仕組みを備えています。書籍の紛失や盗難を防止します。また、ゲートには赤外線センサーが搭載されており、入館者数のカウントも可能です。



6.まとめ
HF帯RFIDは、近距離無線通信技術として、その特性と利点を活かし、幅広い分野で活用されています。公共施設や製造業、医療、オフィスなど、私たちの日常生活や産業を支える重要な基盤技術としての役割を果たしています。特に、通信距離が短いことによる高い精度や誤検知の少なさ、現場での読取性能の安定性といった技術的メリットが評価されています。近年、アパレル業界での普及もあって通信距離の長いUHF帯RFIDが注目されていますが、HF帯RFIDはその特性を活かし、セキュリティや個別認証が求められる場面で優れた性能を発揮しています。今後も技術の進化に伴い、HF帯RFIDのさらなる応用や新たな活用方法が期待されており、社会や産業における重要性はますます高まるでしょう。

タカヤのHF帯RFID製品

ご使用するRFタグ、交信距離、設置環境などご利用シーンに合わせて、リーダライタとアンテナを組み合わせ使用可能です。豊富なラインナップから最適な組み合わせを選定いたします。


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タカヤは、25年以上にわたりRFIDリーダライタを製造してきた老舗メーカーです。当社は、信頼性の高い製品を提供するだけでなく、迅速に対応できるサポート体制を整えています。充実した製品資料や貸出用デモ機器は、国産メーカーならではの行き届いたサービスとして、多くのお客様から高く評価されています。またRFID技術は、施設の入退場管理、工場の工程管理、倉庫の入出荷検品など、さまざまな分野で活躍しています。私たちは、RFID技術を活用したデジタル化や業務改善に取り組みたい企業様に対し、最適な活用法をトータルで提案いたします。業務課題が明確になっているお客様、既存の運用に問題を感じているというお客様も、ぜひ一度タカヤにお問い合わせください。

 

 次回コラム「UHF帯RFIDとは?その特徴をわかりやすく解説」を配信予定

 

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